Derailleur Brew Works

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BEER

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我はカモメ恋に鳴く

ハイアルコールながらも、シンプルな風味でドリンカブル。
レモネードや炭酸水と割って夏らしく味わうスタイルも。
ペールエール
原材料:麦芽/ホップ/アイリッシュモス
ABV:5.0  IBU:32 SRM:4

¥3,600 ~ ¥14,400

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わたしは、生まれつき心臓が弱いらしい。
ほんとうかどうかはわからない。

パパは、わたしと同じ心臓の病気で、わたしが生まれてすぐに死んだんだって。
おじいちゃんが、わたしを海に連れてきては、ビールを飲みながらいつもその話をする。
もう飽きちゃうくらいに、その話を聞かされて。

最後にしかめ面しておじいちゃんは、だからナオコは穏やかに生きなきゃいけないよ、そう言って残りのビールを飲み干すの。
いまではおじいちゃんがしかめ面をするタイミングが手に取るようにわかるようになってしまった。それぐらいずっと言われたからなのか、
穏やかにわたしは生きるべきなんだって、当たり前のように今は思ってる。

今私は17歳だから、きっと15年ぐらいはおじいちゃんにそう教えられてきたんだ。それだけ多くの瓶の数と。何百本、いや何千本だよね。
想像すると、ちょっとおもしろい。

負担をかけない、穏やかな生き方。
きっとおじいちゃんは、パパを失ったときに、もう懲り懲りだったんだと思う。ただ、生きていてさえくれたらいいのに。きっとそう思ったんだと、私は思う。

だからわたしは。
穏やかにわたしは生きるべきなんだって、
当たり前のように今は思ってる。

わたしには好きだった人がいた。
同級生で、同じクラスで、たまたま席が隣だっただけで、最初はただそれだけ。
卒業したら、アメリカに行くんだって。音楽の修行に出るんだって。

行かないでって言えばよかったのかな。
一緒にわたしも行くって言えばよかったのかな。
でもどっちも穏やかな生き方じゃない。
そう思って言わなかった。

おじいちゃんが悲しむ選択なんじゃないかって
>それは私の取るべき選択じゃないって。
そう言い聞かせた。

もうあきらめよう。あの人のこと。
連絡もしない。
向こうで好きな人ができたとしても、それを聞かされたとしても。
羨む資格なんてわたしにはない。

おじいちゃんは海に来たら鼻歌混じりに、餌をあげながらかもめに話しかけてた。
かもめは、あたりまえだけどかもめなんだよ、
きらびやかな他の鳥になんかなれないし、
ならないんだよ。ひとりで飛んでいけばいいんだ。
誰かの望みにあわせて、素直な素振りなんかするより、
ひとりで空を飛んでいけばいいんだよな。

鼻歌交じりにビールを飲むときは、おじいちゃんは、ビールにレモンを絞って、砂糖をひとつまみ入れていた。わたしに買ってくれたはずのレモネードをそのまま入れるときもあった。
フランスで仕事をしているときに教えてもらった飲み方なんだ、っていつも言っていたな。
おじいちゃんから餌をもらい終わったら、おじいちゃんの独り言に飽きたのか、
かもめがキラキラと照り返す海面を、ただ、ひとりで飛んでいったのをいつも思い出す。

わたしもそうやって飛んでいけばよかったのかな。
かもめは、かもめか。
わたしはそんなに強くはなれないのかな。
これからおとなになったらなれるのかな。
うみねこだったらなれるのかな。
大きな声でも鳴けないもんな。わたし。

あの人が離れるってわかってても、泣けないもんな。
おとなになったら、泣けるのかな。
おじいちゃんが美味しそうに飲んでた、ビールの味もわかるのかな。
おとなになったら、わかるのかな。

おとなになったら。



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当ブリュワリーを卒業し、独立して飲食店を夏から始める女子スタッフへのはなむけで作りました。

彼女の希望は、シンプルで飲みやすい、ややもするとカクテルのベースになってもいいビール。
素直で素朴な、まだなんにも染まっていない。これからの出会いや未来でキラキラと輝きの色を変えていく少年や少女の一瞬の夏。
そんなビールです。アルコール度数に比べてかなりドリンカブルですし、レモネードや、炭酸水と割るスタイルもおすすめです。