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SUPERMARKET TAMADE FANTASIA

完熟梅を使用した Belgian Golden Strong Ale です。
すっきりとした酸味とほんのりとした甘みを、ハイアルコールのきれいな黄金色で味わっていただければ。
飲みやすくも度数高め、やっぱりここは燻製された肉、ナッツと一緒に味わっていただけると嬉しく思います。
スタイル:Ume Belgian Golden Strong
原材料:麦芽/梅/ホップ/アイリッシュモス
ABV:7.0 IBU:23 SRM:3
※要冷蔵の商品です。冷蔵庫での保管をお願いいたします。

¥6,600

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『密告者は密告し、強盗は強盗し、殺人者はひと殺し、恋人たちは、恋をする。』

昨日、大学の授業をサボって、映画館で
−その映画館はバイト先、ニシナリにあるなんでも揃うスーパーマーケットの横にある、
マナミが生まれる前の映画を三本上映するような、そんな映画館で−
観た、昔の映画のワンシーンのセリフだった。妙に頭に残ってる。
なんだったっけ、勝手にしちゃえ?どうにでもしやがれ?勝手にしやがって?
なんかそんなタイトルの映画だった。

なんでも揃うってことは、逆にいったら、
なんでも完璧には揃わないってことで。
なんだか品揃えが中途半端なんだ。
マナミは思う。
マナミのバイト先のこのスーパーマーケットは。
エプロンさえしていたら、服装も身だしなみも髪型もまあ自由なところと。
タバコを吸いに行ってる間もバイト代を出してくれるところと
(社員さんもおんなじように休憩を取ってる。ホワイトなんだよきっとこのスーパー。)
あと、マナミの家から歩いてすぐなところがまあまあ気に入ってる。
なので、このバイトを続けてもう6年になる。高校の時からか。

何年も、何年も、心の片隅にすらおいてなくて、忘れかけてたことが。
なにかの拍子に、不意に思い出すことってあるんだな。
なんでそういうことを言うのかって?
だって、今の私のことなんだもん。
マナミは思う。
誰も来ないレジでぼーっと座ってたら、昔のことでも思い出さないと、
全然時間が経ってくれない。
あの秒針の動きが、私の給与残高を高めてくれるバロメーターなのに。
全然進まない。
あ、でも日付変わった。

このスーパーマーケットは、24時間開いているってことと、
なんでも揃うってことがウリらしい。
だけどそれはニシナリ中のコンビニが
もう担っていると思うし、
昔は流行っていたようだけど、
中途半端な品揃えとセンスのなさの前には、
こんな時間にはお客さんは誰も来ない。
酒に酔った旅行者と、同じく酒に酔った冷やかしと。
番人ぶった忽布集団の見回りと。
あとはこの夜の孤独を、
ひとりで持て余しているひとぐらい。
私のような。
マナミは思う。

だけどビールの品揃えはセンスあると思う。そこは店長を褒めてあげたい。
この街は安い酒がよく売れるから、
店長の選んだ品揃えのビールは価格がクソ高くて、
全然客受けは良くない。売る側の身にもなってみたらいいのに。
でも美味いんだよな。世界中のビール、種類がいっぱいあるんだなって。
教えてくれたのは店長だったし、私はそれを受け売りで仕入れと販売もやってる。
店長にやってくれってお願いされたら、なんでもやってしまってる。
ちょっと泣きそうになりながら頼んでくるんだ。あのひと。
かわいいなって思ってしまった。
断れないよなあ。
マナミは思う。

店長に好きって言われたら断れなかったよなあ。
いっぱいキスしてくれて、手も繋いでくれて、
ほんとに愛されてるんだって思っちゃったら、
断れないよなあ。
ベッドの上でも泣きそうな顔を時々する。困らせちゃいたくなる。
だからときどき、意地悪をした。

この前の2‐10郭(ツーテンカク・タワー)の放電爆発で、店長も巻き込まれて死んでしまったらしい。
私の恋も終わったのかな。なんて。
意地悪できなくなったじゃん。
ってちょっと可笑しくなったんだけど、
合同葬儀があって、そこに私も彼女面して顔を出したらいいよね。
マナミは思う。

だけど、店長の遺体のそばで泣いていたのは、
とても綺麗な黒髪の女性と、
男の子と黒髪のきれいなおかっぱの女の子だった。
泣きそうなのはこっちだ。
困らせてるつもりが、
困ってしまっていたのはこっちだったのだ。
ときどき、意地悪をされていたのは、私だったのだ。
マナミは思う。

神様がいて、愛を捧げてくれるんじゃなかったのかよ!

店長が好きな唄のフレーズだった。
全然キーがあってなくて、平たく音痴だったんだけど、
声の心地よいひとだった。
神様でも誰でもいいから、
この退屈な毎日に愛を注いでくれないもんですかねえ。
そうつぶやきながら、マナミは店長の品揃えを守り続け、
一番売れないゴールデンエールのボトルを手に取る。
地味なラベル。生梅が入った金色のビールだ。
みんな梅酒だと思って買っていかない。誰も気づかない。
おいしいのにな。
私のようだな。だれも気づかない。気づいてくれない。案外おいしいのにな。
マナミはボトルを開け、レジに戻り、口をつける。

マーケットに流れていたBGMが、
その時突然非常警報のベルに変わる。
わずかにいた冷やかし半分の客たちの、怒号と恐怖の声が飛び交う中、
マナミはレジカウンターにただただ座っていた。
酔ってしまったからか。
どこかで自暴自棄になってしまったのか。

ふと気づくと、カウンターの前に男が立っていた。20代前半だろうか。
この店で、強盗に入っても奪えるものって何もないよ。
金目のものって大してないし。現金はこれだけ。
マナミはレジを開けて、その日のわずかばかりの売上を男に渡す。
少し心拍があがっているのはわかるけど、怖くはなかった。
その男も、私と同じゴールデンエールを手に持ち、開けていた。

いいセンスしてるよね。あなた。
マナミはそう呟き、カウンター越しにキスをした。

男がキスを受け入れ、そして呟いた。
忽布集団に追われている。この騒ぎの中、逃げ出したいんだ。
手伝ってくれないか。

マナミは彼の手を取り、カウンターの裏に誘導し、
頬を上気させ、返事をする。

『密告者は密告し、強盗は強盗し、殺人者はひと殺し、私は強盗に、恋をする』わ。
『一緒に』なら逃げてあげる。
掴んだ手を、離すつもりはなかった。



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完熟梅を使用した Belgian Golden Strong Ale です。
すっきりとした酸味とほんのりとした甘みを、ハイアルコールのきれいな黄金色で味わっていただければ。
飲みやすくも度数高め、やっぱりここは燻製された肉、ナッツと一緒に味わっていただけると嬉しく思います。